36日目・夕方4

母の写真を見る。今にも優しく声をかけてきそうな気がする。

 

いや、生きてるでしょう? 横浜帰ったら今頃テレビ見て夕食食べてるんじゃないの?

 

本を読んだり、庭の花に水をやったり、紅茶飲んだり、お風呂入ったり、ねぇ?

今日もそんなふうに過ごしてたんじゃないの?

 

いやぁ…。だってお母さんだよ。いないとダメやろ…。

おらんかったらあかんやろ…。

どう考えても大事だよねぇ。いないと何にも楽しくないよねぇ。

お母さんを喜ばせるために生きてたよねぇ。

終わっちゃったよねぇ。無理だよねぇ。耐えられないよねぇ。

意味がわからん。

 

「?」

 

人生の目的がないぞ?

 

一応聞くけど、人って生き返らせられないんですか?

ダメなの。そうですか。知ってたけど。

みんな知ってるね。いつ知るんだろうね。

僕はいつ「死」というものを知ったんだ?

子どもの時、童話か何かで知ったのかな?

じゃあ、お母さんが読んで聞かせてくれたんだ。

「死」についても、その時説明してくれたんだろうなぁ。

なんて説明されたんだろ。どうやって理解したんだろう。

 

「マッチ売りの少女」か?それとも「フランダースの犬」か?

俺は悲しくて泣いたのだろうか。それを母はどう慰めてくれたのだろうか。

とりあえず、マッチをくれ。

擦ったら、亡くなった人に出会えるそのマッチを売ってくれ。