電車の中でもガンガン泣きます。
母の部屋の本棚から、使い切ったティッシュの箱が出てきました。
そこには、こんな文字が書かれていました。
「29才の私を0さいのHが支えてくれた」
「30才の私を1さいのHが支えてくれた」
母は、私のことをメモするとき、Hと書きます。
名前が「ひ」から始まるから。
29才のお母さんを0さいだった僕は支えていたのか…。
何も記憶にない。ただ、泣いて、おむつ変えてもらって、話しかけてもらって、笑ったりもしたのかな。
僕のことを生き甲斐にしてくれてたんだ。
何でそんなこと、ティッシュの箱に書いたんだろう。
なんとなく思いついて、近くにあった箱に書いたんだろうけど、その時、何があったの?
どうしてそんなこと急に書こうと思ったの?
会えなくて、寂しくて書いたんじゃないの?
俺は、母さんを置いてその時なにをしていたんだ?
42さいのHは、71歳の母のおむつを変えたよ。
抱きかかえてトイレに行くのも難しくなった。
おむつもさ、お腹に水がたまって膨れて脱ぎにくくなるんだよ。
だから、おむつ、切ってくれ、って言われて。
母親のおむつって言ったって、パンツだよ。
俺は切るのか。そして脱がすのか。履かせるのか。
なるべく見ないようにしてやったけどさ、
もう衝撃で、心は麻痺したよ。
とりあえず、母の言葉、そっくりそのまま、全部返すよ。
「0さいの私を29歳の母が支えてくれた」
「1さいの私を30歳の母が支えてくれた」
「2さいの私を31歳の母が支えてくれた」
「3さいの私を32歳の母が支えてくれた」
「4さいの私を33歳の母が支えてくれた」
「5さいの私を34歳の母が支えてくれた」
「6さいの私を35歳の母が支えてくれた」
「7さいの私を36歳の母が支えてくれた」
「8さいの私を37歳の母が支えてくれた」
「9さいの私を38歳の母が支えてくれた」
「10さいの私を39歳の母が支えてくれた」
「11さいの私を40歳の母が支えてくれた」
「12さいの私を41歳の母が支えてくれた」
「13さいの私を42歳の母が支えてくれた」
「14さいの私を43歳の母が支えてくれた」
「15さいの私を44歳の母が支えてくれた」
「16さいの私を45歳の母が支えてくれた」
「17さいの私を46歳の母が支えてくれた」
「18さいの私を47歳の母が支えてくれた」
「19さいの私を48歳の母が支えてくれた」
「20さいの私を49歳の母が支えてくれた」
「21さいの私を50歳の母が支えてくれた」
「22さいの私を51歳の母が支えてくれた」
「23さいの私を52歳の母が支えてくれた」
「24さいの私を53歳の母が支えてくれた」
「25さいの私を54歳の母が支えてくれた」
「26さいの私を55歳の母が支えてくれた」
「27さいの私を56歳の母が支えてくれた」
「28さいの私を57歳の母が支えてくれた」
「29さいの私を58歳の母が支えてくれた」
「30さいの私を59歳の母が支えてくれた」
「31さいの私を60歳の母が支えてくれた」
「32さいの私を61歳の母が支えてくれた」
「33さいの私を62歳の母が支えてくれた」
「34さいの私を63歳の母が支えてくれた」
「35さいの私を64歳の母が支えてくれた」
「36さいの私を65歳の母が支えてくれた」
「37さいの私を66歳の母が支えてくれた」
「38さいの私を67歳の母が支えてくれた」
「39さいの私を68歳の母が支えてくれた」
「40さいの私を69歳の母が支えてくれた」
「41さいの私を70歳の母が支えてくれた」
「42さいの私を71歳の母が支えてくれた」
終わり。終わってしまった。
悲しくなるかと思ったけれど、ひとつひとつ時間をかけて打ち込んだら、圧倒されてしまいました。
すごいな、お母さん。
こんなに長い間、支えてもらったのに、僕は泣いてばかりいるのか。
これでいいなんてないからさ。また悲しくなると思うけれど、生きるしかないのか。