30日目・昼3

遺品整理は本当につらいです。

 

もうこれを使っていた母は帰らぬ人となってしまったんだ、

という気持ちをお構いなしにぶち込んできますからね。

それが母がよく使っていたものだったり、これから使おうとしているものだったり、

母を思い起こさせるものだとかなりグサグサと刺さる。

 

こちらにはまだ、

「いや、そろそろドッキリはやめてくれないか」

という気持ちがまだまだある。

ミステリーでよくあるじゃないですか。巧妙に仕組んで死体のすり替えを行うこと。

上手いこと仮死状態を作って僕が見ていない隙にすり替えたでしょう。

それでどのくらい悲しむか試してるんじゃないか、と思うよ。

いつまでも思ってしまうよ。

 

はぁ、まだ認めたくないんだよね。

あんなに一緒にいて安心できた人は母以外にいないよ。

 

バレーボールとか一生懸命応援してたねぇ。

「それっ! 行けっ!! そこだっ!!!」

って、大きな声を出して。うるさいくらい元気だったよねぇ。

 

洗濯物を持ってドタバタ2階に駆け上がっていた母は、

いつからか足が弱くなった。2018年くらいからでしょうか。

2022年に関節にボルトを入れる手術をして、歩くのはだいぶ楽になったと言っていたけれど、

スーパーの階段を降りる時は一段一段慎重に降りていたよね。

転ばないように、手を繋いでゆっくりゆっくり歩いて一緒に階段を降りたんだ。

僕の服の裾を引っ張って歩いた時もあって、

支えが欲しかったとすぐにわかったから手を繋いで歩いたんだ。

子どもの時に戻ったみたいで嬉しかったなぁ。

 

もっと甘えてくれよ、お母さん。お母さんのためなら何でも頑張るからさ。

帰ってきてよ。置いていかないでよ。終わりだなんてあんまりだ。

 

涙がいくらでも出る。鼻水もいくらでも出る。