34日目・夜

涙が止まらない。声が聞きたくてたまらない。話がしたくてたまらない。

 

泣き疲れて、眠っても、ごはんを食べてまた生まれるエネルギーは全部泣くのに使ってしまうくらい悲しい。

 

人間として生きていくというのは、なんて悲しいことなのでしょう。

 

お母さんがいないのは本当につらい。

小学生の時、風邪を引いて学校を休んだ時は、

リンゴをすって食べさせてくれたな。

中学生の時、飼っていたペットのモルモット、

お腹に乗せてソファーで横になって一緒に可愛がったよねぇ。

高校生の時、いい成績を取って見せたら

「すごーい」って抱きついてきて、びっくりしたけど嬉しかった。

大学生の時、乗り換えの駅で待ち合わせて、

ソフトクリーム食べたねぇ。いまあの地下のお店、あるのかわからないけど。

大学院の時、進路に悩んでた僕をずっと見守ってくれたねぇ。

修了後、非常勤講師をしてる時も、朝早かったのに起きて見送ってくれたねぇ。

京都に就職が決まって、お母さんを置いて家を出ちゃってごめん。

寂しくて毎日泣いてたなんて、2ヶ月前に知りました。

3ヶ月に一度、京都に来てくれて、色んな所に行ったよね。

京都、大阪、神戸、奈良、滋賀。

奈良に鹿がいっぱいいて鹿臭かったね。

エサを持って歩いてたら寄ってきて、お母さん怖がってた。

大仏様、めちゃくちゃ大きかった。大きな蝋燭に、家族の平和を願ったお母さん。

1番最初に逝ってしまった。

滋賀。琵琶湖で船に乗ったね。船の中でアイス食べた。

大阪はあまり覚えてない。

塔みたいな所に行く途中、安い靴、買ったら不良品で足怪我してすぐ捨てた。

神戸は賑やかだったね。ステーキ食べた。買い物した。

京都はもちろん中心だった。タワーの望遠鏡から家のベランダで手を振ってる僕が見えたって言ってたね。

京都の市営動物園。モルちゃん抱っこ出来たね。抱っこできる時間、短くて。

全然物足りなーいって言ってたね。

ヨドバシカメラの下にあったパン屋、今はなくなっちゃったけど、好きだったねぇ。

100円ショップはまだあるよ。家に必要なもの、買ってセットしてくれてた。

渡月橋も行った。オルゴールのお店に行った。龍安寺に行った。紅葉、綺麗だった。

ステーキと湯豆腐食べた。トロッコ列車乗った。

ぎっくり腰になった時は、飛んできて看病してくれた。

「お母さんの力を借りずに自分でなんとかする」って言ったのに、

翌日に来てくれた。自分の力でなんとかできなくなっちゃったじゃん。

ぎっくり腰、回復した翌週も来てくれて、銀閣寺と鞍馬山に行った。

ぎっくり腰、回復したばかりで僕は杖、ついて、学問の道を歩いた。

鞍馬電鉄の最終駅にある温泉でごはん食べて。綺麗な景色、見ながら鞍馬山、登った。

職場の大学にも行ったよね。日曜日だから人がほとんどいなくて、

忍び込んで研究室の中を見せることができた。

途中、蓮の葉がたくさんある池があって、めちゃくちゃ喜んでた。

三十三間堂とかも行った。清水寺も行った。八坂神社も行った。東本願寺、二条城。

楽しかったねぇ。何体ものお地蔵さんのいた所、お母さん好きだった。

何て名前だったっけ。調べたらわかるけど、なんだっけ。

帰り道、迷ってバイクで走ってる人に道を聞いたら最初わからなくて。

でもしばらくしてわざわざ戻ってきて、こっちで合ってますよ、って教えてくれたよね。

 

懐かしい。幸せ。こんなのほんのひと握り。群馬に行ってからの思い出もたくさんあるし。

お母さんと過ごした日々は、本当に楽しかった。

なんで死んじゃうの? 意味がわかんないよ。

 

好きなおまんじゅう、1日1個食べても

684年分食べられるから、長生きしてね、

って言ったじゃん。

 

もう一緒に、話したり、食べたり、飲んだり、歩いたり、どっか行ったり、テレビ見たり、ごろごろしたり、笑ったり、できないなんてやだよ。

 

なんてことしてくれたんだ。

 

しあわせが、なくなってしまった。

 

悲しい。置いていかないで。ひとりにしないで。

まだまだいっぱい思い出、作りたいよ。

 

ひどい。100歳まで生きて欲しかった。

人生100年時代なんて嘘つきだ。

どんな病気も治せる環境、整備してから言え!

戦争すんな!武器を作るな!防衛費なんてバカな事にお金を使うな!

医療の発展だろ、大事なのは。

もし戦争なんかなかったら、医療はもっと発展して、助かったかもしれないじゃないか。

 

コロナふざけんな。

コロナにかからないように、色んなこと我慢してるうちに、死んじゃったじゃないか。

WHOもちゃんと原因突き止めろ。

ワクチンも本当に大丈夫だったのか?

70歳になったときに計画してた海外旅行、行けなかったじゃないか。

自粛して、我慢して、これからって時にいなくなってしまった。

可哀想で可哀想でないよ。

 

人生を返せ。