胸が…苦しい…。
お母さんは、他の人の痛みを共感できる人だった。
僕の人生でこれまでいくつかの死別があった。
その度に、お母さんは会ったこともない人の死を一緒に悲しんでくれた。
テレビを見て、病気の人を見て泣いている時もあった。
他人の苦しみを自分のことのように感じて泣いてくれる人だった。
それだけじゃない。他人の喜びを自分ことのように喜んでた。
テレビを見て、大笑いしてたし、バレーもサッカーもテレビなのにめちゃくちゃ応援してた。
お母さんそれさ、もっとずっとやってて欲しかったよ。
もう思い出すことしかできないなんて。あんまりだ。ひどすぎる。早すぎる。
定年退職後を老後とするなら、6年で終わっちゃったじゃないか。
そのうち3年以上コロナだし、妹の交通事故の世話だし。
全然、お母さんの楽しい人生、味わえなかったじゃない。
「私は引き出しがたくさんあるから」
そう言って色んなこと楽しんでたけど。
電話するといつも元気に電話に出てくれたけど。
お母さんのマスクいっぱい届いたよ。マスク買えなかったとき。
手作りのマスク。裁縫、得意だったから。
洗って何度も使ったからさ、使ってないのもまだあるよ。
歌にあるアレじゃん。
母さんが夜なべをしてマスクを作ってくれた。
なんでだよ。なんで死ななくちゃいけないのさ。
おかしいよ。神も仏もない。世界は終わってしまったよ。
大好きな、お母さん。お母さんだけはやめて。つらすぎる。
なんで、なんで、なんで、長生きさせてもらえなかったんだ。
お母さん、こう言ってたよね。
「毎日、家族の幸せを祈ってる」って。
自分のことちゃんと大事にしてたのかな。
僕は毎年祈ってたよ。神社に行ったらさ。「お母さんが健康でありますように」って。
去年大吉だったじゃん。それなのにお母さん、死んじゃったよ。
声が聞きたい。いっぱい話して。なんでも話して。
お母さんの話を聞くの大好きだったから。永遠に聞いていられるのに。
この先、苦しいことがあったら、乗り越えられるかわからない。
お母さんからのパワー、もらえなかったら、だめだ。
負けちゃう。人生、負けちゃう。心が癒えない。安らぎがない。
生きていて欲しかった。ずっとずっと元気でいて欲しかった。