30日目・朝

お母さん、昨日さ、大学の時の友達がごはん誘ってくれて行ってきたんだけど、

こんなこと言ってたよ。

 

その人ね、お母さんのこと、見たことも話したこともないって。

でも、1人暮らしを始めて「金がない金がない」って言ったのを

僕がお母さんに話したみたいなんだよね。

そうしたらお母さん、その人にりんごジュース持っていきなさいって言ったんだって。

 

覚えてる? 覚えてない? うん、そうだよね。

僕も覚えてなかったもん。話を聞いて、思い出したけど。

多分、お母さんにとっても僕にとっても、

お母さんがそんな風に言うのってごく普通の日常的なことだから、

きっと忘れてたんだね。今から24年くらいの前の話だね。

 

忘れてしまうくらいごく普通の日常的なことが、やっぱり温かかったんだ。

毎日毎日、温かいお母さんの元で生活させてもらえてたんだ。

亡くなってから遺影の前で言うけどさ。

お母さんは、やっぱすげぇや。