「もしもし?」
「んー? どしたー? こんな朝早くから」
「ごめん、起こしちゃった?」
「んー? うーん」
「ごめん…ごめんなさい、なんか苦しくなっちゃって」
「えっ! 苦しいってなんだ、どしたんさ」
「お母さんに会いたくて、苦しくて目が覚めた」
「あららぁ」
「お母さんいないなんてつらくて耐えられない」
「あらぁ。困ったねぇ。どうしたらいいかねぇ。お母さんそっちに行ってあげたくても行ってあげられないからねぇ」
「お母さんが色々話してくれたから、毎日元気にやってこれたんだ」
「あら、それはお母さんも同じだよ。Hちゃんと電話して、お母さんいっぱい元気もらってたんだよ」
「お母さんいなくて寂しい」
「だいじょぶだー。お母さんとHはね、がっちりと魂で繋がってるから」
「お母さんがいた42年間、どれだけ幸せだったんだろって、毎日思う」
「お母さんもねー、Hが生まれてからすっごく幸せだったよー」
「もっとずっといて欲しかった」
「そりゃそうさー。お母さんもHちゃんとはなーんもけんかもすることもないしねー」
「お母さんにお花買ってあげたい。お使い頼まれたい」
「今までねぇ、いっぱい色々してくれて、ありがとねぇ」
「まだ全然し足りないよー」
「いいんだーもう。あんたがねぇ、元気にしてくれてたらそれで十分だー」
「やだー。満足しないでよー」
「お母さんそんなに欲張りじゃないんだー。あんたはお母さんが欲張りだと思ってるのかい?」
「そんなことないけど…」
「お母さんの話、うんうんって聞いてくれてたでしょ。それでいいんだー」
「もっといっぱい、一緒にいたかった。お母さんが1番好きなのに、なんで横浜出たのか意味がわからん」
「成長したんだー。Hが京都に行ったおかげで、色々行けたしょ。
お地蔵さんも見れたしねぇ。渡月橋にも行ったし鞍馬山にも行ったしょ。
奈良とか神戸とか、2年半だったけど、京都を拠点にいっぱい2人で行けたしょ。
Hがいなかったら、お母さん京都なんか行ってないわ。Hが京都にいたから、お母さん色々行けたんだよ」
「うん…」
「全部楽しかったよー。思い出がいっぱいできたわ」
「また色々行きたい」
「そうだねー。お母さんも行きたいねー」
「悲しくて仕方がない」
「なんでさー」
「お母さんいないとダメだ」
「ほれ、学校行く準備しなくていいのかい?」
「今日は昼からだからまだいいんだ」
「今日は夜までかい?」
「うん。7時半まで授業だー」
「じゃあほれ、もうひと眠りしなさい」
「お母さんは?」
「お母さんそろそろ起きるわ。いつも6時半ごろ起きてるから」
「ごめんね、早く起こしちゃって」
「いいんだいいんだ。お母さん、Hと違ってなんぼでも昼寝する時間もあるから」
「うん」
「じゃあ切るかい?」
「うん」
「じゃあね、またね」
「うん」