思い出に会いに

お休みのところすみません,おじいさん。
旅の者なのですが,道を教えていただけないでしょうか。


君は誰かね?


フィアと申します。何分,旅慣れていないものでございまして,道を見失ってしまいました。


フィア…。おそらくいまは元の名前ではなく、綴りは『fear』になってしまっているんだろうね。
そうか,いま彼の心を動かしているのは君なんだね。


私の事を知っていたのですか。すみません。
私さえしっかりしていれば,真実を心の中にのみしまっておく事ができたのですが…。


いやいや,長い人生にはいろいろな事があるものだよ。
君は道が聞きたかったのだね。私にその道を示す事ができれば良いのだが…。君はどこを目指しているのかね?


【思い出が眠る場所】です。以前はこの辺りにあったように思えたのですが、見つけることができないのです。


『The place where memories sleep』 ...。 思い出に会いに行きたいということのようだね。


何と言いますか,いまの私がしている事はあまり良い事とは思えないのです。
物事はもっとじっくりと考えた上で慎重に行動に移すべきだと思うのですが,
どうもいまの私にはそういった判断力が欠けてしまっています。
ですから,いま一度,思い出を見つめ直すことで,
これから先の未来を悔いのないよう生きてゆきたいのです。


フィア,君は心に闇を持っているんだね。


あなたにはすべてわかるのですね。


光と闇は誰の心にもある。
しかし,時に,「光しか存在しない心」や「闇しか存在しない心」の2つのうちの
どちらかの状態になるときもある。
彼の心の中の光がすべて思い出になってしまったために,
闇が取り残されてしまったんだね。そうして生まれたのが君というわけだ。
かつて彼の心を強くした,光の強さの根源とも言うべき存在が君だ。


私は,光との協力により心を強くさせていたのですね。


これまではそうだったというわけだ。
これまでは光と闇の調和がうまく取れていたのだが,光は思い出になってしまった。
確かに闇の一人歩きは不安だろうね。


私が今感じているのはおそらくそういうことだと思います。
このままでは,光の彼が成し遂げてきた功績のすべては私が壊してしまう事になる。
せっかくの彼の努力を私は無駄にはしたくない。
夢のひとつひとつを大切にしていくことを忘れ,
不十分な判断しかせずに,不注意に動き回ることなど私は望んでいないのです。


かつて君と対になって存在していた光を持つ者の名も,彼の居場所も私は知っている。
リアムス…彼の心の中には光のみが存在している。
それに君と彼は,いま別々の心となってしまったが,同じ出来事を共有しているのだよ。
彼の知っていることで君が知らないことなど存在しない。少なくともあの一件に関してはね。
それでも君は,彼が眠る場所に行けば新たに何かを得る事ができるというのかね?


(中断)