ジュリアの手紙2

親愛なるファイン・ブラウン教授


聞いてブラウン。私はいますごく穏やかな気持ちでいるの。
でもね。実は私, あなたに手紙を送ったあの日から
毎晩のように悪夢にうなされる夜を過ごしていたのよ。
生活なんてメチャクチャだった。
他に何も考える事なんて出来なくて, ただあの頃の事に恐怖を感じていた。


あの事件の引き金を引いたのは私。
もうすべての原因を作った責任が私にあるように思えてきてしまっていたの。
悪夢の中に出てくるのは, いつもあの頃の私。
彼女は…, つまり, あの頃の私はいつも笑顔で楽しそうに暮らしていたわ。
その幸せを私が壊してしまう事なんてまるで気付く事もしないでね。


無邪気に笑う彼女に私は問いかけた。
「どうして夢を叶えようとしたの?
どうして夢を心の中にしまっておけなかったの?
幸せな夢を夢のままで思い出にしてしまっていれば,
いつまでも幸せな夢を見て過ごす事ができたのに」ってね。
気が付けば私は, 私の過去を消したくなってしまっていたのね。
そんなふうに思う気持ちなんてないと思っていたはずなのに。
私は, 彼女を何度も銃で撃ち抜いた。
でもね, ブラウン。私が消したかった過去は, 夢を見た事ではないわ。
夢のままで終わらせるべきだった夢の結末を覗いてしまった事なの。


でも, もう過去を消したいと思うことはやめにする。
なんだか急に私の過去が愛しく思えてきたの。
だからブラウン, どうか私のことを心配しないで。


あなたが見つけた何かがあなたの答えに導いてくれるといいわね。


追伸。花壇のことはもうしばらくあなたにお任せするわ。


ハイネ・ジュリアノール