ジュリアの手紙1

親愛なるファイン・ブラウン教授


あなたは相変わらず夢を追いかけて過ごす日々を続けているのね。
申し訳ないけれど, 今の私にはあなたの言葉がまるで耳に入ってこないの。ごめんなさいね。
私が夢を見る事が出来るようになるまでには, まだまだ時間が必要だと解釈して頂けるかしら。


それに, 2人で追いかけていた夢の事はもう忘れてしまったわ。
こうしてあなたから手紙を貰わなければ, あの子の事を思い出すことはなくなってしまったもの。
まだひと月程しか経っていないというのに,
もう何年も前の出来事のようにすら感じているくらいよ。


私はね, ブラウン。今回の事で, 人の一生はとても短いものだと気付かされたの。
夢中になれるものがある事はとても素晴らしい事だけれど,
夢中になっている間に過ぎて行った時間のことを考えると本当に恐ろしくなってしまうわ。
その間に一体どれだけの事ができたんだろうってね。
でもね, ブラウン。私はあなたと見た夢の結末を失敗だったとは思っていないのよ。
その理由はいますぐには説明できそうもないから,
そのうち考えがまとまったらレポートするかもしれないわ。
(でも, この手紙があなたに届く頃には, もう忘れてしまっているかもしれないわね。)


私はね, ブラウン。生き方を変えることにしたの。
以前にも伝えたけれど, しばらくは夢なんて見ないで生活してみるつもり。
夢中になる事から一度でも距離を置きたいのよ。
夢がなくては生きられないあなたには考えられない生活に思えるのかもしれないわね。
でも, 夢を見ないで生きるのも意外と悪くはないものよ。
こうしていると不思議ね, そのうち自然と新しい夢を見られるような気になってくるの。
私は, 神様の気まぐれを待ち望んでいるのかもしれないわね。
あなたは私にその時が来る事を願ってくれるのかしら?


ハイネ・ジュリアノール