裁判官, なぜそれほどまでに彼の消滅を望むのです?
私には望みなどない。私は事実に基づき論理的な判断を下したのだ。
目の前の現実から目を逸らし, 心に幻想を描くものはやがて心に闇を生む。
闇を打ち, 心を正しい方向に導く事はお前達の役目。
私は論理を重んじる身として, その指令に従わない理由は一体なんだったのか説明を求める。
ジャッジ殿…。彼の心は意味を見失ってもなお, あれ程までに輝いているではありませんか?
ジャッジ殿にはあの光がお見えにならないのですか?
いまは心にかつての光を宿してはいるが, 存在する意味を見失った光は, いずれ意味を欲しがる。
それが欲望となって闇を生むのだ。私は早い段階から, 闇の芽を摘んでおきたいんだよ。
例えそれが, いまこの時は光であってもな。
それは間違っています。まだ彼の光が闇を生むと決まったわけではありません。
確かに彼は, 最後に幻想を生み出しました。
しかし, 眠りに着いたいま, 彼の心の中に幻想はありません。
もう少し彼に時間を頂く事はできませんでしょうか?
彼の夢は確かに叶うことはありませんでした。そしてこれからも叶うことはありません。
しかし, そんな状況にあるからこそ, 私は彼にこれまでの努力の意味を見つけ出して欲しいのです。
見てください。彼はいま, なくしてしまった未来のことを忘れて眠っています。
目を閉じてこれまでの思いに終止符を打とうとしているのです。
思い出を振り返り, 夢のために生きた事に何か意味を見つける事ができれば,
彼の心は新たな目標のための光として存在し続ける事ができるはずです。
お願いです。彼に時間を与えてやってください。
…。
私はただ可能性に賭けているだけではありません。
彼の努力が実際に生み出してきたものがいくつもあります。
小さな結果から大きな結果まで, 集めだせば計り知れない数が御座います。
私達がいまこうしてあるのも, 彼の努力のおかげです。
そのいくつかを思い起こすだけでも, 彼に消滅の道を辿らせる事はあまりに残酷なものであるとわかります。
いまは彼の努力を賞賛すべき時間です。
彼にもう一度チャンスを与え, 再び輝く日が来る事を待ち続けようではありませんか。
私達は, もっと未来を見つめるべきです。
彼の夢が叶わなかったことが何だというのです! 届かぬ思いがあっても良いではありませんか。
私は戦友として, 彼のこれまでの功績を称えます。
そうか。そうまで言うなら, 我々の例の判断は保留としておこう。
そして, お前達の光が闇となって目覚める事がないよう, お前が責任を持って監視するのだ。わかったな。
はい。ありがとうございます。
良かったな。お前, またチャンスがもらえるってよ。
お前ならきっと大丈夫。1年もすれば, 新しい夢はまたすぐに見つかるさ。
さぁ。俺はお前の分まで忙しくなる。だけど気にするな。ゆっくり休んで思い出を巡れ。